おせち料理は全国共通のように見えて、実は地域ごとに驚くほど多様な特徴があります。
材料の種類、味付け、盛り付け、祝い方――そのすべてに、気候や歴史、地元の風土が深く関わっています。
ここでは、日本各地の代表的なおせちの違いを見ていきましょう。
関東と関西 ― 二大おせち文化の違い
まず最も大きな違いが見られるのは、関東と関西です。
江戸と京都、それぞれの文化圏で育まれたおせちは、味付けや料理構成にもはっきりとした違いがあります。
| 地域 | 特徴 | 主な料理例 |
|---|---|---|
| 関東 | 濃いめの味付けで、保存を重視。醤油の香りが強く、重箱にきっちり詰めるのが特徴。 | ぶりの照り焼き、田作り、黒豆、栗きんとん、紅白なます など |
| 関西 | 出汁を活かした薄味。見た目の彩りや季節感を大切にし、煮物が中心。 | 昆布巻き、棒鱈、煮しめ(炊き合わせ)、叩きごぼう、八幡巻き など |
関東では「日持ち」が重視される背景には、武家文化の実用性が関係しています。
一方の関西では、宮中文化や公家の美意識を引き継ぎ、味や盛り付けに上品さが求められました。
この違いは現在でも、おせち料理の味の印象を大きく左右しています。
北海道・東北 ― 海の幸が主役のおせち
北海道や東北地方は、寒冷地でありながら海の恵みに恵まれた地域。
そのため、魚介を中心に豪華でボリューム感のあるおせちが多いのが特徴です。
- いくらや数の子をふんだんに使った「海鮮おせち」
- ニシンの昆布巻き、紅鮭の焼き物、ホタテの煮物など
- 「飯寿司(いずし)」や「にしん漬け」など、発酵食品も登場
寒冷な気候のため、発酵や塩漬けによる保存技術が発達し、それがおせち文化にも色濃く反映されています。
また、北海道では開拓時代の影響から、洋風のおせち(ローストビーフやスモークサーモン)を取り入れる家庭も増えています。
北陸 ― 加賀百万石の雅な伝統
北陸地方、特に石川県の加賀料理は「見た目の美しさ」と「素材の持ち味」を生かすのが特徴。
冬の寒さの中でも鮮魚が豊富に手に入るため、魚介を使った料理が中心です。
- ブリの照り焼き(出世魚としての縁起物)
- 車麩の含め煮
- べろべろ(卵と寒天の料理)
- 赤巻きかまぼこ、かぶら寿し
「かぶら寿し」は、かぶに塩漬けのブリを挟み、麹で発酵させた冬の郷土料理。
まさに北陸ならではの風味で、正月のおせちに欠かせない一品とされています。
中部・東海 ― 山の幸と海の幸の融合
中部地方では、山の幸と海の幸の両方が豊富に取れることから、多彩な料理が並びます。
伊勢神宮の影響もあり、神への感謝を表す「素朴で丁寧な料理」が好まれます。
- えび芋の煮物
- 里芋の白煮
- 伊勢えびの焼き物
- 紅白なます、金柑の甘露煮
また、静岡や愛知では蒲鉾の消費量が多く、紅白かまぼこや伊達巻が豪華に盛られる傾向があります。
近畿・中国地方 ― 京文化と家庭料理の融合
京都や大阪では、華やかさと季節感を大切にしたおせちが発展しました。
一方で、中国地方では瀬戸内海の魚介や山の幸を活かした郷土色豊かなおせちが多く見られます。
- 棒鱈の煮物(京都)
- 黒豆の丹波煮
- 鯛の塩焼き(岡山・広島)
- 煮しめ(野菜を別々に煮て味を大切にする)
特に京都では、「おせち料理はおめでたい“飾り膳”」という考え方が根付いており、彩り・形・配置にまで細やかな心配りが見られます。
九州・沖縄 ― 甘口と独自の祝い料理
九州地方のおせちは、全体的に味付けが甘めで、見た目も華やか。砂糖やみりんを多く使い、照りのある料理が特徴です。
- ぶりの照り焼き(九州では「鰤の照焼き」が定番)
- 黒豆、きんとん、がめ煮(筑前煮)
- 雑煮はすまし汁に丸餅、地域によって具が異なる
沖縄では本土とは異なる食文化があり、正月には「重箱料理(ジューシー)」と呼ばれる行事食が用意されます。
昆布や豚肉、かまぼこ、こんにゃくなどを詰め、仏壇に供えるのが一般的です。
地域のおせちに見る「祈り」と「暮らし」
おせち料理は単なるお祝いの食事ではなく、その土地で暮らしてきた人々の知恵と信仰の結晶です。
寒さの厳しい地域では保存食、暖かい地域では新鮮な魚介や野菜を活かし、それぞれの風土が反映されています。
つまり、おせち料理とは「日本の食文化の縮図」なのです。
現代では、全国どこでも同じようなセットおせちが購入できますが、家庭の味や地域の伝統を受け継ぐこともまた、豊かな食文化を守る第一歩です。
まとめ
いかがでしょうか。おせち料理には各地域ごとに様々な味付けや、料理があります。
今はネットで手軽におせち料理を注文出来ますから、毎年、各地域のおせち料理を頼んでも、楽しいかもしれませんね。
風習や歴史を感じながら、楽しいお正月をすごしましょう。続く…多分
※この記事は記者の独断と偏見で書いています。エンタメ記事としてお読みください。

